その夜、佐藤は深い眠りの淵で、奇妙な夢を見ていた。どこか遠くの渓流にいるような、絶え間なく続く水の音。心地よいはずのその音は、しかし徐々に不安を掻き立てる不協和音へと変わり、ついに彼の意識を現実へと引き戻した。富田林市には配管交換した水漏れ修理が時計の短針は深夜二時を指している。外は雨など降っていない。それなのに、家のどこかから、確かに水の流れる音が聞こえてくるのだ。寝ぼけ眼をこすりながらベッドを抜け出し、音の正体を探して静まり返った廊下を歩く。音源はトイレだった。ドアを開けると、便器の中の水面が微かに揺れており、タンクから便器へと、細い糸のように水が流れ続けている光景が目に飛び込んできた。その瞬間、眠気は完全に消え去り、代わりに冷たい焦りが背筋を駆け上がった。 「どうしよう…」。頭の中が真っ白になる。レバーを何度かガチャガチャと動かしてみるが、水の流れは一向に止まる気配がない。枚方市でのキッチン修理専門業者を選ぶにはこのまま朝まで流れ続けたら、水道代は一体どうなってしまうのか。万が一、タンクから水が溢れ出したら、床が水浸しになり、階下の部屋にまで迷惑をかけてしまうかもしれない。妻と子供を起こすべきか、いや、無駄に不安がらせるだけだ。佐藤はポケットからスマートフォンを取り出し、震える指で「トイレ 水が止まらない」と打ち込んだ。無数の検索結果の中から、彼は一条の光を見出す。「応急処置:まず止水栓を閉める」。そうだ、元栓を閉めればいい。彼はすぐさまトイレの隅に屈み込み、壁からタンクへと伸びる給水管を辿った。埃をかぶった小さなハンドル式の止水栓があった。祈るような気持ちで、それを時計回りにゆっくりと回していく。シューという音が次第に小さくなり、やがて完全に静寂が訪れた。便器への水の流れが止まったのを確認した佐藤は、その場にへたり込み、大きく安堵のため息をついた。 最悪の事態は回避できた。冷静さを取り戻した佐藤は、原因を突き止めようと、次のステップに進むことにした。ネットの情報によれば、原因の多くはタンク内部の単純な不具合らしい。彼は陶器製の重いタンクの蓋を、細心の注意を払いながら両手で持ち上げ、そっと床に置いた。タンクの中を覗き込むと、そこには見慣れない部品が複雑に組み合わさっているように見えた。解説サイトの写真と見比べながら、一つ一つの部品の役割を確認していく。水位を調節する浮き球、排水口を塞ぐゴム栓のフロートバルブ、それらを繋ぐチェーン。彼のトイレでは、フロートバルブに繋がるチェーンが、アームのどこかに引っかかっているように見えた。「これか!」。原因らしきものを見つけ、彼は少しだけ興奮した。これを直せば、すべて解決するかもしれない。 しかし、いざタンクの中に手を入れてチェーンを直そうとした瞬間、彼の動きは止まった。薄暗い中で見るプラスチックの部品は、思った以上に脆そうで、どこにどれだけの力を加えればいいのか全く見当がつかない。もし、下手に触って別の場所を壊してしまったら?部品が折れて、もっと深刻な水漏れを引き起こすことになったら?そのリスクを想像した途端、DIYで修理するという選択肢は、急速にその魅力を失っていった。節約できるかもしれない数万円と、失敗した時の甚大な被害。その天秤は、もはや比べるまでもなく後者に傾いていた。彼は、自分の知識と技術の限界を認め、プロに助けを求めることを決断した。それは、無力感ではなく、家族と家を守るための賢明な判断だった。24時間対応の水道業者を数社比較し、電話をかける。状況を冷静に伝えると、業者は翌朝一番で訪問してくれることになった。佐藤は止水栓が閉まっていることをもう一度確認し、ようやく仮眠をとるために寝室へ戻った。翌朝、訪れた業者は、やはりチェーンの引っかかりとフロートバルブ自体の劣化が原因だと診断し、手際の良い作業で30分もかからずに修理を終えた。プロの確かな仕事ぶりを見て、佐藤は昨夜の自分の判断が間違っていなかったことを確信した。トイレからのSOSは、彼にパニックの中で冷静に行動することの重要性と、自分の限界を知る勇気を教えてくれた一夜の出来事だった。
深夜二時の絶望と安堵トイレからのSOS