集合住宅であるマンションでしばしば発生するのが、上階からの漏水による被害です。今回は、実際にあった事例をもとに、火災保険がどのように役立ったかを見ていきましょう。都内のあるマンションに住むAさんのケースです。ある朝、Aさんが目を覚ますと、寝室の天井に大きなシミができており、ポタポタと水が滴り落ちていました。すぐに管理会社に連絡し、調査してもらったところ、原因は上階の住戸の洗面台下の給水管の接続部分からの水漏れであることが判明しました。Aさんの部屋では、寝室の天井と壁紙、そしてベッドのマットレスが水濡れ被害を受けました。Aさんは自身が加入している火災保険に水濡れ補償が付帯されていることを思い出し、すぐに保険会社に連絡。事故の状況を説明し、保険金請求の手続きを開始しました。保険会社からは、被害状況の写真提出と、修理業者からの見積もり取得を指示されました。Aさんは指示に従い、濡れた天井や壁、マットレスの写真を複数枚撮影し、懇意にしているリフォーム業者に見積もりを依頼しました。後日、保険会社の鑑定人がAさん宅を訪れ、被害状況を詳細に確認。提出された写真や見積もりと照らし合わせ、損害額を査定しました。その結果、天井と壁紙の張り替え費用、そして水濡れによって使用不能となったマットレスの再購入費用が、保険金の支払い対象として認められました。免責金額(自己負担額)を差し引いた額が、後日Aさんの口座に振り込まれました。一方、漏水の原因を作った上階の住人は、自身の過失による損害賠償責任を負うことになります。このケースでは、上階の住人が個人賠償責任保険に加入していたため、Aさんへの損害賠償(Aさんの保険でカバーされなかった部分や慰謝料など)は、その保険から支払われることになりました。この事例からわかるように、マンションでの漏水事故においては、被害を受けた側は自身の火災保険(水濡れ補償)を活用し、原因を作った側は個人賠償責任保険で対応するというのが一般的な流れになります。どちらの保険も、マンション生活における重要な備えと言えるでしょう。
事例研究マンション上階からの漏水と火災保険