トイレの床に水たまりができているわけでもなく、タンクの外側が濡れているわけでもない。宝塚からして排水口の漏水した水道修理にそれなのに、耳を澄ますと、トイレの中から「チョロチョロ…」あるいは「シュー…」という、微かながらも絶え間ない水の音が聞こえてくる。この、目には見えないけれど確実に存在している水漏れこそが、実は家庭内で最も多く発生し、そして最も見過ごされがちな水道トラブルです。専門の台所のつまりから修理した井手町では、トイレタンクの「内部」で発生し、気づかぬうちに便器の中へと水が流れ続けている状態を指します。この静かなる侵略者は、月々の水道料金をじわじわと蝕んでいく、家計にとっての「見えない敵」なのです。今回は、その敵の正体を突き止め、家庭でできる簡単な診断法と対処法について詳しく解説します。 トイレタンクの内部で水漏れが起こる原因は、大きく分けて二つの部品の不具合に集約されます。一つ目は、タンクの底で栓の役割を果たしている「フロートバルブ」です。レバーを引くとこのゴム栓が持ち上がり、タンクの水が便器に流れる仕組みですが、長年の使用でゴムが劣化して硬化したり、変形したりすると、栓と排水口の間にわずかな隙間ができてしまいます。その隙間から、まるで川の水が流れるように、水が便器の中へと漏れ出し続けるのです。また、フロートバルブに繋がっている鎖が、他の部品に絡まって栓が完全に閉まらなくなっている、という単純な原因も考えられます。 二つ目の原因部品は、タンクに給水する量をコントロールしている「ボールタップ」です。タンクの水位が下がると給水を開始し、水面に浮いている「浮き球」が所定の高さまで上がると給水を停止させる、という重要な役割を担っています。このボールタップ内部にある水を止めるためのパッキンが劣化すると、水位に関係なく給水が止まらなくなり、余分な水が「オーバーフロー管」という、タンクから水が溢れるのを防ぐための筒を通って、便器の中へと流れ込みます。これが「シュー…」という給水音が鳴り止まない原因です。 では、この目に見えない水漏れを、どうやって確実に診断すれば良いのでしょうか。そのための、非常に簡単で効果的なテストがあります。まず、トイレのタンクの蓋を開け、水面が完全に静止していることを確認します。次に、食用色素(食紅)や、色の濃いインク(ただし水性で、陶器に色移りしないもの)を、タンクの水に数滴垂らします。そして、トイレのレバーには触れずに、そのまま10分から15分ほど待ってみてください。その後、便器の中を覗き込んでみましょう。もし、便器の水に色がついていたら、それはタンクの内部から水が漏れ出している動かぬ証拠です。タンクの水が透明なままであれば、内部での水漏れは起きていないと判断できます。 このテストで水漏れが確認されたら、次はその原因が「フロートバルブ」と「ボールタップ」のどちらにあるのかを特定します。再びタンクの中を観察し、水がオーバーフロー管の上端から流れ込んでいるのが確認できれば、原因はボールタップの不具合です。オーバーフロー管には水が達していないにもかかわらず便器に色が移っているのであれば、フロートバルブの劣化が原因と断定できます。 原因が特定できれば、対処法も見えてきます。フロートバルブの鎖の絡まりであれば、手で直すだけで解決します。しかし、部品そのものが劣化している場合は、交換が必要です。フロートバルブもボールタップも、ホームセンターなどで数千円程度で購入でき、交換作業自体もそれほど複雑ではありません。しかし、適合する部品を正確に選ぶ知識や、水回りの作業に慣れていない方が行うと、接続不良から新たな水漏れを引き起こすリスクも伴います。特に、ボールタップの交換は、給水管の取り外し・取り付けという重要な作業を含むため、少しでも不安があれば、無理せず専門の水道業者に依頼するのが最も安全で確実な選択です。 トイレタンクからの微かな流水音は、単なる耳障りなノイズではありません。それは、あなたの家の水道メーターが無駄に回り続け、家計に静かなダメージを与えていることを示す警告音です。その声なき声に気づき、簡単なテストで原因を突き止め、適切な対処を施すこと。それが、見えない敵との戦いに勝利し、日々の安心と経済的な暮らしを守るための、賢明な一歩となるのです。
見えない敵との戦い、トイレタンク内部の水漏れとその静かなるサイン